更新日:2017年03月13日

熱処理

鉄鋼に代表される、一部の金属は加熱や冷却によってその内部組織に変態が起こり、性質が大きく変化する場合がある。
 熱処理とはこうした特性を利用して、材料の特性向上を目的に行われる処理のことである。
 圧延など、金属を冷間加工した場合、組織の格子欠陥が増大して硬化する(加工硬化)。これを融点の半分程度まで加熱すると、熱エネルギーにより結晶が再構築されて元の硬さに戻る(回復)。このときの温度を再結晶温度と呼ぶ。
 鋼の場合、温度と冷却時間によって、パーライト、オーステナイト、マルテンサイト、ソルバイトといったそれぞれ異なった結晶構造に変態する。
 焼ならしは鋼をパーライト組織にする熱処理で、高温に熱して一旦オーステナイト組織にした後、徐々に冷却してパーライト組織を得る。この際、加工硬化の影響が無くなり、靭性が改善される。焼ならしは前処理として行われることが多い。
 焼入れは、鋼を熱してオーステナイト状態にした後、水中または油中で急冷してマルテンサイト組織に変態させる。これにより硬度は硬くかつもろくなる。
 マルテンサイト組織の鋼は、もろいので再度熱処理を行い、靭性を回復させる。これを焼戻しという。
 金属を再結晶温度以上に熱することを焼なまし(焼き鈍し)といい、これにより加工硬化などを起こしていた組織が再結晶によって整えられる。これにより硬度は下がり、加工応力が除去される。結晶組織も均質化するため、加工の前後工程として行われることが多い。 

熱処理の種類について
熱処理の種類
方法
主たる目的
焼ならし
鋼をオーステナイト状態から徐々に冷却して、パーライト組織にする。 加工硬化の除去。靭性の改善。
焼入れ
鋼をオーステナイト状態から急冷してマルテンサイト変態を起こさせる処理。 硬度が増す。
靭性が低くなる。
焼戻し 焼入れした鋼を、再度600度付近熱処理することにより、マルテンサイト組織がソルバイトに変態する。 焼入れによって低くなった靭性を高くする。
焼なまし 金属を再結晶化温度以上に熱することにより、組織を均質化し加工応力を除去する。 残留応力の除去、硬度を低くする、結晶組織を均質化する。

用語解説

変態

温度を上昇または下降させた場合などに、ある結晶構造から他の結晶構造に変化する現象。磁気変態のように必ずしも結晶構造の変化を伴わないものもある。

加工硬化

金属材料は加工により外力が加わると、その結晶中に多くの欠陥(転位)が発生する。この転位が絡み合ってすべりを起こさなくなると結果的に硬化が起こる。

靭性

じん性。粘り強さ。衝撃破壊を起こしにくいかどうかの程度。

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