更新日:2017年03月10日

ティグ溶接・ミグ溶接・炭酸ガス溶接

アーク溶接法における、溶接部の大気元素との反応による特性劣化を防ぐ手段として各種のイナート(不活性)ガス雰囲気中で溶接する方法がある。
 その代表的なイナートガスとして、アルゴンやヘリウムを使う場合(ティグ溶接・ミグ溶接)と、炭酸ガスを使う場合が挙げられる。
 イナートガス溶接では、電極と材料(母材)との間にアークを発生させ、溶接部には電極周囲よりイナートガスを吹きつけ、大気と遮断する。
 ティグ溶接(タングステン・イナート・ガスアーク溶接)は、電極にタングステンまたは酸化物入りタングステンを用いるが、タングステン電極の先端はほとんど溶融しない(非消耗電極)。溶接に際しては側面から充填棒を挿入し、この充填棒と母材とが溶融して接合を行う方法である。
 ミグ溶接(メタル・イナート・ガスアーク溶接)は、溶接ワイヤとして電極線を用い、その先端と母材との間にアークを発生させ、両者を同時に溶融させて溶接する。
 これらのイナートガスアーク溶接は、フラックスが不要なためアークが安定しており、溶接方向に自由度が高く、また大気を遮断するため化学的に大気と反応しやすい金属(アルミ、銅、チタンなどの非鉄金属及びステンレス)であっても溶接が可能である。
 炭酸ガスアーク溶接は、イナートガスの代わりに、安価な炭酸ガス(CO2)を用いて鋼を溶接する方法である。炭酸ガスアーク溶接ではミグ溶接と同様、電極には主に溶接ワイヤが使用される。CO2は高温で分解し、COとO2に分離、特にO2により溶接部への酸化が起こるため、溶接ワイヤ自体に脱酸化性元素を加える。軟鋼に対してのイナートガス溶接は高価につくため、こうして酸化対策を施した炭酸ガス溶接が普及し、自動車、造船、橋梁など軟鋼、低合金鋼の溶接方法として、被覆アーク溶接に代わって利用が拡大している。 

ティグ溶接・ミグ溶接・炭酸ガス溶接の仕組みを絵で示した写真

適している分野・使用事例

ティグ溶接、ミグ溶接

アルミ合金、銅合金、チタン、ステンレスなどの溶接。

炭酸ガス溶接

軟鋼、低合金鋼の溶接。

用語解説

イナートガス

アルゴン(Ar)やヘリウム(He)は安定的な元素であり、高温になっても金属元素とは容易に反応しない。

軟鋼

鋼のうち炭素含有量が0.12〜0.30%のものを軟鋼という。建築用の構造材や水道管など一般的な用途に用いられる。