更新日:2017年04月19日

鍛造

金属加工のうち、金型や工具によって素材を圧縮変形させ、所定の形状に成形する作業を鍛造という。原始的には、ハンマー等で素材を叩いて加工を行ったり、鍛冶屋として熱した素材(鉄など)を叩き武器や農耕具を製造した。
 現代では手作業の代わりに、機械式のハンマーやプレスによる鍛造加工が行われ、大型タービンの主軸といった大きなものから、数ミリ単位の機械部品といった精密なものまで、様々な製品作りが行われている。
 一般的に、金属を鍛造加工すると、素材金属内部の結晶が一様化されるため、強度が上がる・靭性が高まるなど機械的性質も改善される。
 鍛造加工は、加工時の素材温度により熱間・温間・冷間の区別がなされ、また工具を用いて行う自由鍛造(free forging)と金型により行われる型鍛造(die forging)に大別される。

 熱間鍛造とは、材料を再結晶温度付近にまで加熱して行う鍛造である。材料は赤熱するまで加熱され、加工が容易となり大型の製品を加工できる。また、素材結晶が加工により変形しても、熱間鍛造においては再結晶されるため、残留応力の少ない製品が得られる。製品強度についても、鋳造などに比べて高い機械的性質を得る。
反面、金属素材は冷えるにつれて収縮するため、製品に寸法精度が求められる場合には仕上げ加工が必要となる。
 冷間鍛造は材料を加熱せず加工を行うため、熱間鍛造に比べて高い寸法精度が得られる。また金属素材は変形により加工硬化が起こるため、高強度な製品が得られる。しかし、工具や金型には非常に高い剛性が求められ、また製品に残留応力が残る場合もある。このため、冷間鍛造は熱間鍛造の仕上げ段階で行われることが多い。
 両者の長所を取り入れるため、材料加熱温度を常温以上再結晶温度以下とし鍛造を行うのが温間鍛造である。 

鍛造の仕組みを絵を使って示した画像

適している分野・使用事例

工具、機械部品などより高い強度や靭性を求められる部品。大量生産品。

用語解説

靭性

じん性。粘り強さ。衝撃破壊を起こしにくいかどうかの程度。

機械的性質

引張強さ、降伏点、伸び、絞り、硬さ、衝撃値、疲れ強さ、クリープ強さなど、機械的な変形及び破壊に関係する諸性質。

残留応力

外力又は熱勾配が無い状態で、金属内部に残っている応力。溶接時には材料部分の冷却速度の差により内部応力が残留する。熱処理、冷間加工、鋳造などによっても残留応力を生じる。

加工硬化

金属材料は加工により外力が加わると、その結晶中に多くの欠陥(転位)が発生する。この転位が絡み合ってすべりを起こさなくなると結果的に硬化が起こる。